代表あいさつ

成人向け映像(アダルトビデオ)業界に、2016年、激震が走りました。「出演強要被害」で知られる不幸な事案が表面化し、業界が出演者の人権に無配慮であると同時に構造的な問題を抱えていると厳しく指弾されたのです。
同映像制作に関わる各段階および各社においては、人権に慎重に配慮をして制作、運営を行ってきた部分もあり、当初は私も戸惑いましたが、業界内外の様々な立場の方々からご提言を戴くうちに各社の対応だけでは不十分であることがわかりました。
まず、この業界には今まで存在しなかった出演者を中心とする組織を作り、団体の強みを生かして、業界内の企業などに権利を主張していく必要があると考えました。
そのうえで、業界内のあらゆる組織と連携し、契約の在り方を含めて、全体を根本から改善していかなくてはならない。それが成人向け映像業界に向けられた社会からの要請でもあり、改善したことを証明することのみが、業界の存続を許される唯一の道であると判断した次第です。
私にとって、成人向け映像の世界で働いた日々は、引退から十数年になる今でも人生の宝であり、他所では得られない貴重な体験の数々は、引退後に戻った著述業の糧ともなってきました。
また、この業界では多くの知己も得ました。然しながら、デビューこの方の十数年のうちには、彼らの人生の浮沈を目にする機会もあり、これまでにこの業界で働く人々、ことに女性たちの社会的な立場の弱さを一方ならず痛感してきたことも事実です。
ここに私は、成人向け映像の表現者をネットワークで繋ぎ、個人の尊厳・働く権利・人並みに生きる権利の保障を追求する組織の創設を宣言いたします。
成人向け映像制作の入り口から出口までの、そこで働く人たちの人権の保護や労働環境の整備などへの配慮を求め、その後のセカンドキャリアを見据えた教育機会の創出や、現場における問題発生時の相談窓口の設置、および法的なサポートなどを実施したいと考えています。
この業界の表現者(出演者・クリエーター)の安全と個人の尊厳が保障されたとき、はじめて成人向け映像業界全体の健全化も達成し、広く社会的に受け入れられるところともなるでしょう。
英知を募り、日本の成人向け映像に明日があることを望む人々と手と手を携えつつ、業界の表現者の権利確立のために邁進したいと思います。
すべての表現に貴賤はなく、すべての表現者に権利がある。
私は過去を忘れません。
昨日を抱きしめ、今日を誇らしく生き抜いて、共に明日を手にしましょう。

平成28年7月吉日
一般社団法人 表現者ネットワーク(AVAN)
代表 川奈 まり子